近年、日本各地で起きる地震と共に、それによって起こる津波に関してもクローズアップされることが多いですね。
地震が起きたときの知識や心構えと同様、津波が起きたときのものもしっかりと学習して、活かしていきましょう。
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津波はどうやって起こるのか?
津波が起こるきっかけになるのは地震である場合がほとんどです。
ここでは地震による津波のメカニズムについて解説していきます。
簡単に申し上げますと、海の中での地震により海底の地盤が大きくズレ動き、海全体が揺り動かされることで巨大な波が発生します。その発生した波が海岸に押し寄せたものが津波です。(下図参照)
泳ぐのがうまい人は「津波が襲ってきても泳げばなんとかなる」と思う人もいるかもしれません。
もしそう考えている人がいるならば、改めてほしいのです。
例えば、マグカップに入れた飲み物にスプーンを入れると小さな波ができますが、津波はこれとは性質が違います。
津波は、マグカップを持って運ぶときの液体の揺れに近いのです。
スプーンを入れたときは表面をなでるくらいの動きなので液体の揺れも小さく、すぐに収まります。
ですが、マグカップを持って運ぶときには器(うつわ)自体を大きく揺らしてしまうことになり、そうなると中身の液体の波も大きく、揺れがおさまるまでの時間も長く、最悪こぼれてしまう。
つまり、液体の表面から伝わるエネルギーと、液体が入っている器そのものから伝わるエネルギーは大きく違うということです。
実際は、器が海底の地盤そのものであり、液体は海全体。そこに海底の岩盤が上下にズレ動いて崩れるような大きな破壊が生まれれば、伝わるエネルギーは絶大なものになります。
例えば海底地盤が壊れたことで海底が沈み込んだ場合、沈み込んだ方向に水の流れが引っ張られます。
これによって海全体の水が引っ張られ、一番ハジ、つまり海岸付近の水が瞬間「引き波」になります。場合によっては海岸付近の水が一時的になくなります。
それだけの大量の海水が広い範囲で沖の海底地盤の沈み込みに向かって動いているということです。
引いた後の波はどうなりますか?押し波になりますよね。これの繰り返しが津波になるのです。
海底地盤が破壊され、海底が盛り上がった場合、今度は逆の動きになります。
海底が盛り上がったことで海全体の水は上に押しのけられ、押し波になり、海岸付近には波が押し寄せます。
そのあと引き波になり、繰り返される。
始まりが押し波でも引き波でも、動いている水の規模があまりにも大きすぎるため、何度も押し引きを繰り返し、静まるまでには時間がかかります。
さらに、家屋や自動車、木などの障害物までも丸ごと飲み込んだものが流れていきます。物理的な衝撃も相まって、そのパワーは強大。
津波はあまりにも速く大きすぎる凶器、「水のかたまり」なのです。
プールの中を泳いでいるのとはまるで違うということが分かるでしょう。
また、「津波を確認してからでも走って逃げれば間に合う」と思っている人もいるかもしれません。
もしそうなら、この機会にぜひ改めていただきたいです。下図をご覧ください。
津波はその性質上、海岸に近づくほど波長(波の山から次の波の山までの距離)が短くなり、スピードがゆっくりになり、高くなります。
岸に近づくにつれ海の深さが浅くなるだけスピードが殺され、逆に波は上に高くなり、沖の速いスピードの波が岸の遅い波に追いつき威力を増すことで起きる原理です。
イラストに時速36km(自動車と同程度のスピード)とありますが、これは人に例えると一番速い短距離走のアスリート選手(100m走を10秒)のスピードと同じくらい。
「一番遅い津波でも自動車と同じ速さ」。
しかも、なんの障害物もアップダウンもないまっすぐな道で、体力が無限にあると仮定してやっと津波のスピードと同程度です。
津波から逃げる道中はそんな都合のいい状況ではないし、人間なので体力にも限界がある。
大きな津波であれば海岸を越え、防波堤さえも破壊し、陸地に侵入してきます。
海岸で津波を確認してから逃げるのでは遅いですし、自動車で逃げるにしても通れる道が限定され渋滞の可能性もあるのです。
実際、東北地方太平洋沖地震のときに自動車による避難で渋滞が発生し、身動きが取れなくなって逃げ遅れた事例もあります。
ポイントは、「津波警報が発令されたらただちに逃げる」。津波警報は地震発生後2~3分で発令されるので、津波到達前にすぐ逃げることが大事です。
もちろん、気象庁も最悪の事態を想定して発令しますので、なにもせずとも被害に遭わない場合もあります。
ですが、避難は自分の命を守る行動です。命に二度目はありません。取り越し苦労に終わったとしても、それで済んでよかったと割り切ることも必要です。
また、海岸付近に住んでいるのであれば「大きな地震の揺れを感じたら安全を確保したあと、津波警報・注意報を待たずに逃げる」。
令和6年能登半島地震では津波警報が発令される前、地震からわずか1分で津波が到達し、被害も出ました。
大きな地震の揺れに身の危険を感じたら警報を待たずに速やかに逃げる勇気も大切です。
そしてもっとも大事なのは、「遠くではなく、高いところを目指して逃げる」こと。
先ほども申し上げましたが、大きな津波の場合、陸地部分にも侵入し、迫ってきます。
津波のスピードは人が走って振り切れるものではなく、平野部などだとどれだけ遠くへ逃げても追いつかれてしまうでしょう。
ですから、「遠く」ではなく「高いところ」を目指して逃げてください。
避難場所に指定されているエリア、余裕があるならさらに高いところ(できれば鉄筋コンクリートの頑丈な建物)を目指しましょう。
また、津波避難タワーや、複合商業施設などの大きな立体駐車場があればそこを目指して逃げましょう。
そして、津波の高さが仮に30cmだとしても、大人ひとりの足元をさらうのに充分であると認識し、軽視しないようにお願いします。
30cmの静かな水面に足を入れるわけではありません。津波は自動車と同じスピードでいろいろなものを巻き込みながら動いている巨大な水のかたまりです。
そして、計算上はたった1mの津波でも大人が死亡する可能性は100%だと言われています。
Youtubeなどの動画サイトで「中央大学 津波」などで検索すれば、津波の体験施設での動画が簡単に観られますので、お時間あれば視聴してみてください。
津波避難のポイント
- 津波警報が発令されたら、ちゅうちょせずにただちに避難を開始する
- 海岸付近の場合、地震の揺れに身の危険を感じたのであれば、警報の有無にかかわらずただちに避難を開始する
- 高いところへ、より高いところへと避難する
南海トラフ巨大地震
ここでは、近年発生確率が高いと言われている南海トラフ巨大地震について、警戒されている理由などを解説していきます。
南海トラフ巨大地震とは
静岡県から宮崎県の太平洋側の沖にある「南海トラフ」という海の溝付近を想定震源域とした巨大地震のことです。
警戒されている理由
このエリアの地震は、おおよそ100~150年の周期で繰り返し発生しており、次の周期に当てはまるのがこの先30年ほどと推定されること。
また、海域を震源とするため、津波被害での死者数が甚大と想定されていることなどが挙げられます。
地震規模・被害想定
この広い想定震源域のエリア全体で地震が発生すると仮定したとき、想定マグニチュードは9.0程度(東北地方太平洋沖地震と同等)、あるいはそれ以上。
死者数は32万人とされ、これまでの地震被害最大の大正関東地震の死者数10万人を大きく上回る想定とされています。
臨時情報の発令
このように、想定どおりに地震が発生したときの被害があまりに大きいため、地震発生兆候が見られたときには気象庁が「南海トラフ地震臨時情報」を発令し、「太平洋沿岸地域の住民に1週間の事前避難生活」などの防災対策などを促すとしています。
主なその内容を挙げます。参考になさってください。