とある工場で勤務してるけど、監視カメラが気になってしょうがない・・・。
サボってないか見張ってるのかな?
ってか、そもそもあれって監視用なの?
こんな疑問にお答えしていきます。
今回の素朴な疑問にお答えしていくのは、製造業にたずさわって15年ほどの従業員かむです。
大手企業ほど、このカメラが多く設置されている傾向にあるみたいですが、はたして監視用なのか?
監視用でないならどんな理由で設置してあるのか?
監視用とそうでないものがあるのなら、見分けはどうつけるのか?
そんなところまで解説していきます。
コンテンツ
答え:監視用ではない
「監視用ではない」。…というふうに答えましたが、「サボっているのかどうかを常に確認するためのものではない」という意味です。
要は、誰かが絶えず内容をモニターしていて、サボってるのを見つけ次第文句を言いにいくとか、ひそかに減給対象にするとか、そのためのものではありません。
それでは、このカメラはいったいなんのためのものなのか?
続いて解説していきます。
カメラ設置の意味
工場内に設置されているカメラの意味としては以下のとおりです。
カメラ設置の意味
- 不具合流出の後追い
- 不具合原因の後追い
- 不安全行動の後追い
不具合流出の後追い
これはあくまで「最悪のパターン」ですが、例えば自分の工場で作ったものに不良品があり、顧客にそのまま届いてしまった場合。
いわゆる「クレーム」対象となり、自社の信用や経営存続にかかわってくるとても大きな不具合です。
もちろん、真摯(しんし)な姿勢で謝罪し、正規品を納入しなおさなければなりません。
しかし、これだけでは根本的な対策や予防策がなされていませんよね?
つまり、その時点ではまだ次に同じような不良品の流出が考えられる状態なのです。
では仮に、製造工程の過程で組み付けられるべきある部品が欠品している不具合流出だったとしたら、どのような対策をするのか?
「ある部品を組み付ける工程までさかのぼる」必要があります。
「その工程から製品が完成するまでの工程の間になにかが起きて欠品した」。
そう考えるのが自然です。
では、工程作業者にそのときのことを思い出してもらって聞いてみましょう。
・・・なんて都合のいいようには進みません。
人の記憶はあいまいですし、なにより、いつどのタイミングの欠品なのかなんて後から聞かれても誰にも分かりません。
そこで、カメラの登場となるわけです。
カメラの内容はリアルタイムで観るだけではなく、当然記録もしてあるものですので、「どの工程で起きたのか?」に焦点を合わせて後追いをすることが可能になっています。
製品には製造日や納品日の記録がありますので、カメラ内容と合わせて調べれば、ただやみくもに探るよりも効率よく進められます。
不具合原因の後追い
「どの工程で起きたのか?」が分かったら、「なにが原因で起きたのか?」を探ります。
つまり例の場合、
- 部品が一時的に足りなくなり、作業者がつけ忘れた
- 作業途中に他の作業者に話しかけられて工程が抜けた
- 確実につけたが、後工程を流れる途中ではずれた
・・・などなど、いろんな可能性が考えられるわけですが、カメラ内容がしっかりと残ってさえいればいくらでも後追いできるのです。
ここまで後追いできたのであればあとは再発防止策を練るだけ。
1であれば、取り出し指示ボタンとランプを設置する。
2であれば、一工程終わるまで作業を中断しない。他作業者は作業中の作業者に話しかけない。
3であれば、工程間のコンベア移動に関する設備的な改善をする。・・・などなど。
不具合流出の反省だけにとどまらず、しっかりと対策をして再発をふせぐためには、カメラの設置のメリットはあまりにも大きすぎるところがあるのです。
不安全行動の後追い
先述したふたつの理由は「品質」に関するものでしたが、こちらは「安全」に関する理由です。
例えば、走行中のAGV(無人搬送車)に、歩行中の作業着のソデが引っかかって軽度の災害に遭った映像がカメラに保存されていたとしましょう。
通常は考えられないことですが、ビデオを確認してみると、作業者は携帯をいじりながら歩行していました。
・・・というあまりにもお粗末な災害は、実際に災害報告として私が目にしたものなのですが。
「これこそ監視のため、ヘンな行動をする奴がいないか見張るためにカメラを設置してるんだろ!」と思うかもしれませんね。
ですが、考え方の原理は不具合品と一緒です。
AGVと人が接触することによる災害が起きた。
ではそれは「どこで起きたのか?」「なにが原因だったのか?」
その瞬間をカメラ内容で後追いできれば明確に見えてきます。
再発防止策も練ることができる。
内容から、AGV、人ともに移動中に起きた災害。
ならば、移動中のAGVは自動車と同じ鉄のかたまりなので、AGVを優先的にとおして、安全を確認後、人が通行するようにする。
また、携帯を使用するなら、安全な場所で立ち止まってから。
どこかで聞いたようなありふれたルールでも、災害報告という事例を見れば、なぜそのルールを守る必要があるのかまでハッキリと理解できる。
文章だけでは理解しにくいものも、実際の映像なら理解しやすい。
カメラは、単に監視をするためでも、ましてや災害を起こした本人をさらしあげるためのものでもない。
品質にしろ安全にしろ、すべては再発をふせぐために張られた予防線であると認識していただけると、カメラの存在意義が明確になると思います。
監視用との見分け方
とはいえ、本当に作業者の監視用やサボり抑止、ダミーなんていうカメラも中にはあるかもしれません。
そこでここからは、監視用カメラとの見分け方について解説していきます。
こんなカメラに注意!3ポイント
- 可動式
- 360度対応
- 配線が見当たらない
可動式
これはメタルギアをご存じの人にはメッチャ響いているはず!
後追いするために設置したものなら、各工程の全景が収められるポイントさえ押さえておけばいいだけなんですが。
逆に可動式にしてしまったら、死角になる範囲が常に変わってしまって工程を把握しづらくなる。
死角になる範囲が常に変わることでメリットが得られる状況ということは。
できるだけ広範囲をカバーできる状況。
つまり、作業内容ではなく、作業者自身の動向を追っているということ。
もしかしたらサボりを目撃されているかもしれませんね。
360度対応
ちょっとスクロールして戻るとカメラの画像がありますが、360度対応はこのタイプ。
防犯の意味も含めて街中によく設置されているものです。
カメラひとつで文字通り360度の広範囲をカバーできてしまうので、いろいろな場所をまとめて見るには便利ですが。
言ったように、後追い目的でカメラを設置するなら、広範囲を把握する必要はないのです。
つまりは街中の防犯カメラと同様、「人の動向を見るためにある」と考えるのが自然。
サボりを見られているかもしれませんよ!
・・・まあ、その他、不正なことしないようになんていう意味もあるんだろうけど。
配線が見当たらない
カメラがあるだけで「うおっ!」とビビってしまうそこのあなた!
カメラに配線がつながっているのか、冷静に見てみましょう。
見る影もないのなら、それはダミーの可能性が高いです。
ダミーだってことは実際に監視できなくてもいいってこと。
畑のかかしやディスク、水が入ったネコよけペットボトルと同じようなもんです。
「分りきったこと言うなよ!」と思うなかれ。
ビビって舞い上がってしまうと、普段ならできる冷静な判断もできなくなったりするんですから。
無線で飛ばすタイプならごめんなさい。裏の裏です。
チャフを使って通信障害を引き起こしたら、すみやかに作業に戻りましょう。
まとめ
工場内におけるカメラ設置の意義としては、「品質安全のアクシデントが起きたときの後追いのため」だとお分かりいただけたと思います。
でも、残念ながらサボり抑止の意味合いも含まれますので、日ごろの素行にも注意して作業していきましょうね!