近年頻発する地震について、基本的なことから実践的なものまでしっかりと知識を蓄え、いつでも引き出せるように備えるためのコンテンツです。
コンテンツ
地震の豆知識
震度とマグニチュードの違い
震度とマグニチュードは明確に違うものです。
ひとつの地震において、各エリアでの揺れの大きさが震度、地震そのものの規模(エネルギー・パワー)がマグニチュードです。
例えば、ライトのワット数だと、ワット数が大きければ大きいほど光が強くなり、より遠くへ届きますよね。これがマグニチュード(ライトそのもののエネルギーの大きさ)です。
ライトに近い場所のほうが明るく、遠くなればなるほど暗くなっていきます。これが震度(ライトの明るさ)です。
また、マグニチュードの考え方は、1000の平方根(つまりおおよそで32×32)をベースとしているため、そこからマグニチュードが1増えればエネルギーは約32倍、2増えれば1000倍、3増えれば約32000倍・・・となり、単純に2倍3倍ということではなくなってきます。
おおよそですが、マグニチュード5~7くらいが中規模地震、7~8くらいが大規模地震、8~9くらいが巨大地震、それ以上だと超巨大地震などと呼ばれます。
ちなみにマグニチュードだけで言えば、日本でもっともマグニチュードが大きい地震は東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の9.0で、世界中の地震で見ても4番目に大きい超巨大地震でした。
地震の震度階級
続いて震度の解説です。震度階級は、現在日本で使われている「震度3」や「震度4」といったものの区分です。下の図をご覧ください。
震度速報などでよく目にする震度は、すべてが四捨五入されているものであり、ぜんぶで10段階用意されています。
日本のあらゆるところに設置された震度計で自動で震度を測り、四捨五入されたものを提供しています。
「弱」「強」がある理由
震度階級の中で、震度5と6については区分がさらに細かく区分されていますが、これは過去の震度階級において同じ震度5のエリア、もしくは震度6のエリアで被害状況に大きな違いがあったからです。
過去の震度階級は0~7までの8段階でしたが、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)後、修正を余儀なくされます。
周知のとおり、この震災での被害はとても甚大で震度5や震度6のエリアもありましたが、同じ震度5、あるいは震度6でも被害状況が大きく異なるエリアが多く見られました。
そのため、被害状況の把握や救出活動の遅れにつながってしまい、より復興に時間がかかる結果となりました。
このことを踏まえて、現行の震度階級では震度5と6についてはさらにふたつに細分化して、迅速な状況把握に努めています。
震度5弱・強を震度5・6、震度6弱・強を震度7・8としなかったのは、上図の表の計測震度を見ると分かるとおり、計測震度と表記した震度の間に大きな差ができてしまうためです。
ちなみに各震度での被害状況の目安は下図のとおりです。
震度5弱では「大半の人が物につかまりたいと思う」なのに対し、震度5強では「物につかまらないと歩くことが難しい」。
また、震度6弱では「立っていることが困難になる」なのに対し、震度6強では「はわないと動くことができない」。
・・・というように、同じ震度でも状況がだいぶ違いますね。
このように、震度が分かればおおよその被害状況を把握でき、防災機関の初動(最初の行動)までが迅速になります。
ちなみに、各防災機関の震度ごとの初動は下図のように明確に取り決められています。
震度8は存在するか?
前述したとおり、現在の震度階級は10段階で最大でも7となっているので震度8は存在しません。
その理由ですが、まずひとつめに「今までに震度8になる震度を計測したことがないこと」。
震度階級表から、震度8に当てはまるのは計測震度7.5以上になりますが、これまで日本で起きた地震でもっとも大きかった計測震度は熊本地震の6.7。
震度8に必要な計測震度までは0.8も開きがあります。物理的に起きないと言えそうな震度ですよね?
ふたつめに、「震度7を最大級の被害状況・防災機関の初動内容としている」からです。
震度ごとの対応基準について参考イラストを紹介しましたが、実は震度7では「そのエリアの被害状況が最大級と想定して、すべての防災機関が最大級の初動をとる」としています。
つまり震度7でも震度8でも、防災機関がとる初動に変わりがないため、仮に震度8を設けても意味がないのです。
同じ地震なのに名前がたくさんある?
2011年3月11日に起きた超巨大地震。「東日本大震災」という名称はご存じの人が多いかと思いますが、実は「東北地方太平洋沖地震」という名称もあります。
「東北地方太平洋沖地震」は気象庁がこの地震に対してつけた地震名で、言わば正式名称です。(名称の最後が「地震」)
対して「東日本大震災」は、この地震がきっかけとなって起きた災害すべてを差して使い、その有無と名称は必要に応じて国が決めるものです。(名称の最後が「大震災」)
つまり、東日本大震災とは、「東北地方太平洋沖地震によって起きた津波・原子力発電事故・家屋損壊・土砂災害・電気ガス水道の停止など、すべての災害の総称」です。
地震名と震災名の両方がある他の例として、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)、大正関東地震(関東大震災)があります。
2024年現在、このみっつの地震のみが「大震災」と名付けられていますが、際立つのは「死者・行方不明者数の多さ」と「災害の大きなかたより」です。
日本の地震災害において、死者・行方不明者数がもっとも多かったのは関東大震災で10万人あまり。次いで東日本大震災で2万人あまり。阪神・淡路大震災では5番目の多さとなる6000人あまり。
また、災害別の割合で見ると、関東大震災では火災(焼死)が9割、東日本大震災では津波(溺死)が9割、阪神・淡路大震災では建物倒壊(圧死)が8割と、大きなかたよりがあるのが分かります。
緊急地震速報と震度速報
緊急地震速報は「地震が起きる直前」、地震への準備がとれるように流される情報です。
大きな揺れが予想されるおおまかな都道府県エリアが提供されます。
速報から地震発生まで時間にしてわずか数十秒程度の場合が多いかと思いますが、いきなりモノを投げつけられるのと、「投げるよ」と言われてから受けるのではできる準備が違いますよね?
地震をとめることはできませんが、備えることはできます。情報が入手できる環境であるならば、積極的に活用していきましょう。
これらの情報を受けとることができる私たちの身近な媒体は、テレビ・ラジオ・携帯端末・防災行政無線などがあります。
テレビではNHKの放送が分かりやすいでしょうか。「強い揺れに警戒してください」というやつですね。
携帯端末は大音量のアラーム音のあと、「地震です」のコールがされるアレです。
防災行政無線は夕方のメロディー放送が流れるスピーカーから流れてきます。
いずれも震度5弱以上の揺れが見込まれる地震で、震度が4以上と推定されるエリアに対して発令されます。
なお、陸地の浅い場所が震源の場合、揺れが伝わるまでの時間が早いため、速報よりも揺れのほうが先にくる場合があります。
それに対して震度速報では「地震が起きたあと」、震源やマグニチュード、地震があったエリアや震度などの詳しい情報が流されます。
テレビなどで「この地震による津波の心配はありません」などが付け加えられたりするやつですね。
このように、緊急地震速報はこれからくる地震のための情報、地震速報は直前に起きた地震に関する詳細情報ということで、意味合いが異なります。