有名ブロガー・ヒトデさんの「きょうだい児」についてのブログ記事に触発されました。
きょうだい児になる可能性もある健常者の私が伝えたいことをつづっていきます。
私はすでに40代なので、これからきょうだい児になったとしても他のきょうだい児のみなさんのようなつらい苦しい思いは多分しないので恐縮なのですが。
まず、私がきょうだい児になる可能性の根拠からザックリ書いてきます。
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ハンチントン病
現在、私の父親が指定難病のハンチントン病をわずらっています。主な症状は不随意運動(体が意志と関係なく大きく動く)。
認知障害や行動異常、統合失調症、情緒不安定などを併発するややこしい病気です。
現時点でこれといった治療法はなく、症状の悪化を遅らせるくらいしかできません。
それに加えて発症から10~20年が寿命とされています。
遺伝性のものということで、父親が発症した場合50%の確率でその子供に遺伝すると言われています。
発症時期はまちまちですが、私の父が50代、一般的に30~40代ということなので、私やみっつ下の弟もグレーゾーンに突入といったところ。隔世遺伝もあるらしい。
つまり、私と弟は潜在的にハンチントン病にかかる可能性があるということです。
若年で発症するものもなくはないですが、少なくとも人格形成に重要な幼少期にかかわるものではありません。
私も弟も成人していますので、心配事といえば施設利用の経済面くらい。
でも手続きは大変ですが指定難病ということで特定疾患の補助もあるし、なんとかできる感じです。
ということで、私が今一番思っているのは、私や弟が結婚して子供を授かったときに後世に引き継がれていったらヤダなと。
とはいえ日本では100万人に7人くらいの割合、実際の症例もまだとぼしいのでどこまで信じていい情報なのかは未知数ですけどね。
実は父がハンチントンを発症したとき、病院側にこう言われました。
「血液検査をすればハンチントンが遺伝するかどうか判別できる」って。
私はそのときこう思いました。「仮に遺伝するのが分かったとして、それを聞いてどうすんの?」
現状、それが分かっても私が私にできることはなにひとつない。ムダに検査費用がかかるだけと思って断りました。
「ハンチントンは遺伝性だ」これだけで充分。
もし私に最愛の人ができて子供の話になったら知ればいいことです。
まあ、そもそも今のところ私も弟もそんな浮いた話はないっていうね(笑)
初期症状と個人の特性が延長線上にある
父はもともとこんな感じの人でした。
「物の扱いが雑」「静かに動けない」「チック症状みたいなものが出るときがある」「こまかい作業が苦手」
だからドアを静かに閉められなかったり、家の中をドスドス音を立てて歩いたり、物を壊してしまったりすることがあっても特に何も感じなかった。
よくよく見てみれば、それらの行為も不随意運動からくるものであったかもしれない。
もしかしたらすでにそのとき症状が表れ始めていて、その初期症状が長かっただけなのかもしれません。
母には手を上げなかった父が感情的になり手を上げようとする機会が増えたとき、「いつもと違う」とは気づけませんでした。
私は全力でとめることしかしなかった。父の変化に気づけなかった。
そこからの悪化は速かったです。普段怒るはずのない場面でイライラしたり、情緒不安定・・・というより言ってみればヒステリックになる場面が多くなりました。
そんな中でも母だけは小さな変化から気づいていたみたいで、一度病院で診てもらおうと父を何度も説得したものの、どうしても首を縦に振らなかったみたいです。
ハンチントン病は発症したからといってすぐに目に見える大きな変化が表れるというものではありません。
またその人個人の性格や特性の延長線上の症状が出るので、周りの人が気づいてあげるのが遅れる可能性があります。
前述したとおり、ハンチントン病は不随意運動の他にも様々な症状を併発するために、症状が進んでくれば人との共同生活というのも難しくなってきます。
無理に自宅でケアしながら一緒に生活を送ろうとすれば一緒にいる人までもつぶれてしまい、家庭崩壊を招く危険だってあります。
実際問題、行動異常を起こしたり、情緒不安定でワケの分からないことをしたり言ったりするハンチントン病患者を24時間、目を離さず看ることができるのかという話。
冷たいと思われるかもしれませんが、ハンチントンになった人がしっかりとケアをしてもらえる施設を選んであげること。
そのほうが結局はお互いが無理することなく平穏に生活を送れると感じます。
自分たちだけではまかなえない大きすぎる負担を、専門の人に託していくだけ。別に二度と会えなくなるわけじゃない。
自分たちだけでかかえこまないことが大事かなと思います。
ハンチントンの私の父について、入院までのいきさつをもう少しくわしく書いた記事もあります。
→医療機関などが取るリモート面会の措置に思う「面会」の在り方
健常者こそが知っておくべき少数者の存在
ここまで私が語ってきた難病にかかっている人。
きょうだい児に見られるような知的障害・身体障害・精神障害を持つ人。
大きくくくればLGBTの人たち。
私たち健常者が知ったつもりになっている「少数者」についての知識は、実は間違っているものが多い。存在すら知らない人もいる。
例えば電車の中で奇声をあげたり、自分を傷つける行為を繰り返したりしている人がいたらあなたはどうしますか?
「恐れる。見て見ぬふりをする。注意する。しかりつける。」
極端に背が低い人をみかけたら?
物珍しくて二度見しますか?ナンダコイツとにらみつけますか?
そういう障害があるというふうには考えられませんか?こういう人もいる。こういう世界もあると。
そりゃあ健常者の常識で考えれば不思議な光景が目の前に広がってるんだからいろんな感情も疑問も浮かぶでしょうよ。
でも別にそういう人たちは、したくてそうしてるんじゃないんですよ。自己顕示欲が強くてそうしてるわけでもない。
その人の事情知っててそうしてんの?なんか危害を加えられたわけじゃないでしょ?
その人そんな仕打ちを受けるような悪いことしたの?
日本人はとにかく出るクイは打ちたがるけどさ、本当にしちゃいけない幼稚な偏見差別なんてやめるべきなんじゃないの?
日本の陰湿ないじめや差別の根底にあるのってそういう偏見でしょ?
その人を1から10まで理解してくれとは言わない。納得してくれとも思わない。
ただ、知ってあげてほしい。そういう人がいるって知ってあげてほしい。
私からすれば色眼鏡で人を見ること自体が障害だわ。
身体障害者やLGBTは取り上げられる機会も多くなってきてなんとなく認知はされてきてる。パッと見れば分かる場合も多いしね。
でも知的障害や精神障害は目に見えないことも多い。だからこそ健常者こそが認知をしていかなきゃいけない。偏見や差別をなくすためにも。
特別扱いをしてやさしく取り扱うのではなくて、知ってほしい。ただ、知ってあげてほしい。
どんな特徴があるのかに目を向ける努力をしてほしい。それだけ。
当事者の言葉が一番響く
例えばきょうだい児の体験談を勇気をもって語ってくれたヒトデさん。
トランスジェンダーとして独自の切り口でライフスタイルを語る青木歌音さんのように。
当事者が語る事実は他の誰の言葉よりも深く突き刺さるし、素直に受け入れることができますよね。
「当事者だけの問題だ」「他の人には分からなくていい」と閉鎖的になるのではなくて。
まだ知らない人やよく分からない人に向けて「こういう人がいるんだ。知っておいてね」とオープンに広めてくれたりもする人を私は全力でプッシュしています。
その心の持ちようがすごく気持ちいいじゃないですか。
予備知識があれば驚きも偏見も差別もないでしょうし。
私であれば、「まだ」当事者ではないですが、身内の者としてハンチントン病がどういったものなのか。
また、家族や身内の人がどう対応していけばいいのかを伝えられたのが今回一番大きいところではあります。
まとめ
ヒトデさんのきょうだい児の記事を読むことで派生的に浮かんだ私の伝えたいことを書いてきました。
相手は自分と同じ人間なんですから、同じように接するのが人間として自然じゃないかなあと思う。
さて、実は私は今の今まで「きょうだい児」という言葉自体を知らず、ヒトデさんのブログ記事で知ることができました。
きょうだい児を深堀りするだけでなく、実体験やそのときの心境を多く盛り込んだヒトデさんのヒトデなりがよく分かる記事となっています。(←尊敬の念を込めてますですよ!)
ヒトデさんの記事もぜひ読んでみてください。→ 「きょうだい児が結婚した話」
ヒトデさんが書いた初の人生改革本のかむ的レビュー記事はこちら。→【ヒトデ本】全力全開レビュー【控えめに言って超ひいき目】