いい叱り方、悪い叱り方ってどんなものがあるのかな?
こんな疑問にお答えしていきます。
人間教育する上で「褒める」と「叱る」はどちらも大切なことで、どちらか一方が欠けてしまえばその意味をなさなくなります。
そしてどちらも使い方を間違えれば意味をなさなくなるどころか、信頼を失います。
先日、実際に私の職場で起きた「叱る」はあまりにもひどいものでした。
そこで今回は、現場で起きた絶対にしてはいけない叱り方とその叱り方のどこが悪かったのか?
そして本当ならどのように叱ればよかったかについてお話していこうと思います。
コンテンツ
上司の突然の叱責
それでは、私が勤める職場で起きた「叱る」を例に挙げて解説していきます。
とある日、職場の朝礼後、その職場の上司が同僚の若い男性に向けて静かに、でも強い語気でこう言いました。
「もう少し早く出勤してこい。遅刻ギリギリすぎる。」
男性は黙って聞いていました。
私は彼が何を注意されているのかよく分かりませんでしたが、そのあと職務に入る前に少し涙を浮かべながら同僚や私にこう言いました。
「朝礼の直前にお腹が痛くなってトイレにいっていたら朝礼ギリギリのタイミングになってしまいました。
ギリギリだったけど、遅刻はしていない。私はどうしていればよかったのですか?みんなの前で言われて恥ずかしかった。」
ここでようやく話が見えてきました。同僚の男性は普段、遅刻ギリギリのタイミングではないですが、割と出勤は遅めのほうです。
それを知っていた上司が、その日遅刻ギリギリで朝礼に参加してきた同僚を見て「今日は寝坊しかけたのか。だらしないな。」と思って注意したというところでしょう。
この叱り方はとても悪い例となります。
叱り方の悪かった点3つ
ここで、この叱り方のどこが悪かったのか、3つのポイントにして解説します。
叱り方の問題点のひとつめ。
寝坊して遅刻しかけたと決めつけて注意したということです。
このとき上司は、普段の彼の行動を基準にして、そこから勝手なレッテルを張って想像を巡らせていると推測できます。
つまり、「彼は普段から出勤が遅めだ→今日も起きるのが少し遅くなって遅刻しそうになった」という一方的な想像で口頭注意をしたということ。
確かに、普段の行動というのはその人のイメージを作るひとつの要素ではあります。
しかし、普段遅めに出勤してくることと、その当日ギリギリで出勤してきた理由が寝坊であるかどうかはまったくの別問題。
立場が上の上司であるからこそ、思い込みで動いてはならないのです。
叱り方の問題点のふたつめ。
仲間が大勢いる前で名指しして叱ったことです。
おそらくこの上司としては彼に何か悪気があってしたことではないとは思います。
というのも、始業を控えたタイミングでは、朝礼後という時間の中で注意せざるを得なかったと考えられるからです。
とはいえ、注意される側としては公開処刑でも受けたような気分でしょう。
実際にもし私が同じ状況で注意されたのであれば、同じように思ったはずです。
特にこの同僚は若いし結構ナイーブなところもあったので、そのへんまで考慮して動かなければならないところです。
一上司がひとりの従業員をそこまで把握するのは難しいでしょうけどね。
叱り方の問題点のみっつめ。
上司が前述したような主観的な判断をし、口頭注意までしていることです。
上司をはじめ、重要なポジションを任されている人間に一番大切なのは、従業員(部下)の誰に対しても常に客観的な視野で判断し実行しなければならないということです。
私的な感情や主観的な見方は必要ないはずです。
そうでないというのなら、平等に見なければならないところを差別してみていることになります。
仮に親や同僚が彼を叱るときでもこれは同じ。
これが上司だから、なおのこと問題なのです。
適切な叱り方
前項で悪い点を3つ書き出しているので、これに対しての改善策がそのまま適切な叱り方につながります。
ひとつめの問題点での適切な叱り方は、まず最初になぜ遅くなったのかを聞くことです。
頭ごなしに叱りつけにいったのでは、叱る側の気持ちを一方的に表して終わるだけ。
だからこそ、自分の勝手な思い込みではなく、本人に直接聞いて理由を明らかにする。
そのうえで本人が寝坊したと言ったときに初めて叱ればいいのです。
叱られるような状況かどうかも分からないときに叱られるなんて、誰が味わっても不快でしかない。
そんな行き違いは避けるべきでしょう。
ふたつめの問題点での適切な叱り方は、自分と本人だけの状況で静かに諭すことです。
私の同僚の言葉にもあったように、大勢がいる前で叱られたら、恥ずかしさもあるし罪悪感も増す。
そんな中で何を言われたって頭に入りなどしません。
ひとつひとつの言葉をできるだけ冷静な状態で聞いてもらうにはどうしたらいいか。
大勢の前よりも一対一のほうがいいだろうし、語気を荒げないほうがいいっていうことも分かるはずです。
表情だってできるだけ穏やかにしたほうが、相手は緊張せずに聞ける。
全否定の姿勢でいるよりも理解を示す姿勢のほうが、相手の態度は軟化する。
そういったことを瞬間的に考えて行動できるのがベストです。
また、同じ大勢の前でも、褒めてあげるときならいい状況だと思います。
みっつめの問題点での適切な叱り方は、同じ目線になって極めて客観的な視野でいることです。
もちろん、自分の立場や権威を使って高圧的に押さえつけて叱るのは真逆の行為ですね。
組織としてどうしてもこうしなきゃいけないとか、そうしないとさらに上の人に何か言われるからとか、そんなことは関係ない。
上司がまず考えるべきは、自分の下で働いてくれているメンバーのこと。
上司としてメンバーをかばうことはあっても、自分の都合だけで相手を不利な状況におとしいれるなんて、あってはならないこと。
それ以前に人が人にするべき行為ではないですよね?
自分の体裁や損得だけを気にして叱ると、こんなふうになってしまいます。
あくまで人と人とのやりとりなんだということを忘れないようにしなければなりません。
適切な叱り方ができないとどうなるか?
冒頭で言いましたが、不適切な叱り方は従業員(部下)からの信頼をすべて失わせます。
そしてそれを修復するのは極めて難しいです。
今回の例の上司もおそらくそうであるだろうと簡単に想像がつくと思います。
上司からすれば「あれ?なんか俺悪いことしたっけ?」くらいに思っているかもしれません。
ところが実情はそうではなくて、関係のほころびの原因すら気づかないうちに、相手との距離がどんどん離れていっているわけです。
ハタから見れば非常に恐ろしいことですよね。
まとめ
人を褒めるとき叱るときに、自分や相手の立場・地位などは関係ありません。
必要なときに必要な教育が自然体でなされているかどうか、ただそれだけです。
人の教育をするときには、決して自分本位になってはいけません。
同僚同士であったとしても考え方はまったく一緒。
もし、自分の体裁や損得だけを気にして行動したら。
その瞬間から、二度と埋まらないミゾができあがり始めるということを覚えておいてほしいと思います。
他にも「褒める」「叱る」という観点から書いている記事がありますので、よろしければどうぞ。